臣隆妄想劇場⑧(修正版)


『幸福』

「俺は…お前だけなのに」

あれから臣の言葉がずっと、
頭の中でリピートしている。

俺、あいつに酷いことばっか言って…

サイテーだよな…

なのに…何だろ?

顔がニヤける 。


「なにニヤニヤしてんの?」

うつ伏せでソファーに寝そべって、
臣が聞く。

リリックスピーカーを弄(いじ)っている。

「気のせいでしょ?元からこんな顔だよ」

「知ってるけど」

「は!?」

「着替え取りに行くんだろ?早く行ってこいよ」


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定期的に自分のマンションへ着替えを取りに帰っている。

クローゼットから衣服を出しながら、チラッとベットを見る。

あの夜のことが甦る。

あいつ…エロ過ぎ…

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一週間分の着替えを持って、臣と同居するマンションに戻ると、
洗面所で臣が髭を剃っていた。

後ろから音も立てずに近寄り、臣の耳元で「エッチ」と囁(ささや)く。

「はぁ⁉️」

「おれ今ゲーヒーちゃん剃ってるだけなのに、どこが?」

「るせーっ!臣、エロい」

「なっ…いつの話?どのシーンの俺?」

「気持ち悪いから、はっきり言えよ!」

「誰が言うか」

「……」

「先に出るよ!行ってきます」

臣はシェービングジェルを顔につけたまま、右半分を剃り終えた状態で固まっている。


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結局あの大阪の夜は、
同行していたAKIRAさんと夜通し飲んでいたそうで、証拠写真がインスタにPOSTされていた。

何で信じてやれなかったんだろ?

…あの日から、俺ヤバいよな。
  
マジであいつに惚れちゃったのかな?

ソロのMVで共演している恋人役の女性にすら、ヤキモチを妬いている自分がいる。

くそっ…臣のやつ、あんなエロいシーン撮ってからにぃ…

…何か

あいつと付き合ってる証が欲しいな。

結果、やたらと臣を束縛しようとする。

「臣、キスは?」

「臣、ハグして」

「臣…手つなご♡」

最近完全に女子化してるよ…おれ…

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「お前さぁ?別れるとか言ってなかったっけ?」

「そんなこと言った?覚えてないな」

「ホントに覚えてないの?」

「えっ?臣、俺と別れたいの?」

「いや…」

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一緒にいる時は隆二に髪を乾かしてもらってるけど、
あいつ最近目に見えて変わってきた。

「臣〜ぃ!おいで〜♡ブローしてやっから」

何だろ?

俺にめちゃ尽くしてくれる。

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「どうしても俺と…そうなりたいのなら…俺達の…あの部屋でしてよ…」


思い出すだけで、汗が吹き出る台詞…

すぐにそうなっちゃうのかと思ってたけど、そうでもないみたい…

お互い失うものが多くて、踏み出せないでいるのかもね。

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いつものソファーに二人で座り、
風呂上がりの臣の髪に顔を埋めてみる。

「くん…」

あー…いい匂い♡

「つむじの匂い嗅ぐのヤメろ〜…」

TVの方を向いたまま、臣が言う。

「臣、アイス食う?」

臣の耳元で聞く。

「食う」

「ん♡ちょっと待ってて」

耳にキスをして立ち上がる。



フリーザーをガサゴソやっている隆二を見て、俺は思った。

最近、めっちゃイチャイチャしてくるな…あいつ。

こっちが恥ずかしいわ…

まぁ…黙っていなくなるよか、この方がよっぽどいいけど…



臣はキスされた耳の辺りを触りながら、少し照れたような顔で口を尖らせた。




夜はもっと甘かった。

ベットに入ると隆二がすぐに背中に張り付いてきて、朝まで離してくれない。

「甘〜い!」と声に出す。

すぐに「ハンバーーーグ♡」と返してきた。

ダメだこりゃ…

悪い気はしないけどね。

自然に笑みがこぼれた。

「オオカミ君。指輪くれたら、してもいいよ!」

「しない」

「いーの?」

「しないったら、しない」

「やせ我慢?」

「男に二言はない」

「それならそれでいーよ」

「おやすみぃ!ちゅ♡」

もうっ!くすぐったいな…耳周辺はやめろ!

背中に隆二の温もりを感じながら、
顔が熱くなった。

真夏に密着されてるよ…おれ。

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《隆二、おめでとう㊗️ by 健二郎》

《今市くん ハッピーバースデー✨ by ELLY》

メンバーからのLINEで気がついた。

あっ…おれ今日誕生日だった。

「はい、これ」

なんの前触れもなく、
臣が白い小さな手提げ袋を手渡した。

「えっ?いいの?ありがとう」

「ん」

「開けてみていい?」

「いいよ」

「えっ⁉️指輪…」

小さい箱の中に、クロムハーツのゴールドリングが入っている。

「俺とペア」

「…マジで?」

「うん」

「でも、左手はすぐバレっから右手の薬指でいーんじゃない?」

「臣…手ぇ見せて」

「同じだろ?」

「うん…」

そうじゃなくて…

あの左にしてたリング、外してある。

「臣…あのリングは?」

「…だって、お前嫌なんだろ?」

「うん…」

「そういうことだよ」

自然と口元が緩む。

「ん…」と臣が口を尖らせた。

「へ?」

「お礼は?」

臣の首にまとわりつき、キスをする。

そのまま狭いソファーに倒れ込む。

「めっちゃ甘い」

「気のせいでしょ?」

あっ!
俺さっきアイスの実食ったんだ。

またキスをして、抱き合った。

「ん…やっぱ甘い…」

「ずっとこのまま続けばいいね…」

「……」

その時は、臣の心の葛藤を知る由もなかった。





『葛藤①』


「一ヶ月ですか?」

ソロ第二段のレコーディングで、
またオランダへ行くことが決まった。

「ソロデビュー曲も絶好調だし、
アフロジャックもまた登坂君と会えるのを楽しみにしているって」

LDHの先輩との会食で同席していたプロデューサーから、スケジュール追加の話があった。

「期待してるよ」

握手を交わす。


その後、例のゴシップ記事で隆二と一悶着あり、まだオランダ行きを言い出せないでいる。

渡欧前に、どうケジメをつけるか?

答えを出せない自分がいた。



「隆二…あのさ」


「ごめん、臣!戻ってからでいい?
呼び出しがあったから事務所に行って来るね!」

そう言うと、隆二は軽くキスをして出かけていった。

まさか、あいつも海外へ?

無意識に薬指のリングを触った。



「半月後にアメリカですか?」

ソロ曲の制作や写真撮影の為、
1ヶ月半の滞在予定で半月後に渡米することが決まった。

デビュー前から憧れていた、著名なミュージシャンとの一大プロジェクト。

大きな夢に向かってのフライトになる。

ただ一つ気掛かりがあった。

スケジュールの打ち合わせが終了した後スマホを見ると、
数十分前に臣からメールが入っていた。

《俺も急に打ち合わせが入ったから、遅くなるかも?先に休んでていいよ》

臣の打ち合わせって?

ひょっとしてあいつも…



同居するマンションに先に帰宅し、
ベットで横になっていると、
夜中に物音がして目が覚めた。

いつ帰ってきたのか?

臣がゴソゴソと布団に入ってきて、
後ろから俺を抱きしめた。

「臣…帰ったの?」

「ごめん…起こした?寝てていいよ…」

「なんか話あったんじゃ…」

「ん…明日するから…おやすみ…」

「…ん」

俺も…明日話さなきゃ…

臣にしっかり抱きしめられたまま、
眠りについた。



「2ヶ月離れるってことだね」

「臣はいつ出発すんの?」

「…一週間後」

「それって…急に決まったわけじゃないでしょ?」

「…色々あったからな。言い出すのが遅くなった」

あっ!それでペアリング…

臣は腕時計を見た。

「もう出掛けなきゃ…出発まで打ち合わせとかスケジュールが詰まってて」

「俺も同じ…」

「また夜にゆっくり話しよ」



臣はそう言ってたけど、その日から数日帰宅時間も合わなくなり、
どちらかが帰ると片方は休んでいて、
朝になるともう出掛けているという生活が続いた。

一緒にいる時間が極端に減ってきたけど、
臣…あれから夜もひっついてこない。

俺もどこかで気兼ねしている。

一度LDH事務所で見かけた時は、
思いつめた様な顔をして、
俺が近くにいるのも気づいてなかった。


あっという間に6日が過ぎ、臣の出発を翌日に控えた日、久々にオフが重なった。

同じ時間を過ごすのも今日が最後。

しばらくは会えないし…

よーし!

今日は1日中、臣にベッタリやな!

しかし臣は準備があると言って、
自分のマンションに行ったっきり戻ってこない。

臣…

何か悩んでるのかな?


フライトまであと、24時間になった。


マヤ

三代目・BTS妄想ストーリー書いています

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