『W旦那+(プラス)』 三代目妄想劇場 番外編(最愛④)
湯上り処の引き戸を開けると、中は結構な人でごった返していた。
臣の姿はどこにもない。
隆二は真っ直ぐ飲み物を提供するカウンターへ行き、スタッフに声をかけようとした。
スタッフは何かを察したように手を止めて応対した。
「あの、登坂様でしたら、先程中庭の方に出ていかれましたよ」
「あ…ありがとうございます!」
何も言ってないのに、よく分かったな…と感心しながら中庭に出ようとした。
不意に立ち止まり、振り返ってスタッフに尋ねる。
「一人でした?」
「いえ、お連れ様がご一緒でした」
「え?連れって…」
気にはなったが、それ以上は聞かなかった。
ー知り合いにでも会ったのかな?
美しく整備された中庭を進んでいくと、ベンチに見慣れた男が座っている。
隣にいるのは…
数年前、臣と噂のあった女優だ。
隆二は無意識に身を隠した。
ー偶然ここで再会したのか?
ーそれとも…
声を掛けようか迷っていると、女が臣に話しかける声が聞こえてきた。
「あなたがフリーになったら…私、隆臣くんを育てる覚悟あるから」
ーなに…!?
目の前が真っ暗になった。
ーどういうことだ?臣…
隆二は足早にその場を離れた。
気配を感じた臣が、隆二の後ろ姿をとらえた。
「隆二…」
つづく
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2019.07.06 00:16
2019.07.05 13:59
2019.07.05 09:17