『W旦那+(プラス)』 はじめてのおつかい⑩三代目妄想劇場 特別編
『はじめてのおつかい』撮影当日になった。
よく晴れ渡った空の下で、マンション前に臣と隆二、今日の主役の隆臣が立っている。
できるだけ日常のままでという配慮で、TV局関係者、撮影スタッフは少し離れた場所で待機している。
隆二は小さなちょんまげヘアでパンダリュックを背負い、アンパンマンのあったか裏起毛トレーナーを着た隆臣に子供ダウンを羽織らせている。
隆二「たっくん寒くない?ニット帽も被っていこっか」
隆臣「あちゅいね、帽子いらなーい」
臣「着せすぎじゃないか?動きにくいんじゃ…」
隆二「途中で暑かったら脱いで、近くにいる大人に渡していいからね」
隆臣「だれでもいいの?」
隆二「うん、いいよ!パーパがすぐに回収に行くからね🎵」
臣「いいのか?それで 笑」
隆二「風邪引かないか心配だよ」
隆臣「パンマンといっちょだから、だいじょぶよ」
臣「あれだけガードが居たら大丈夫だよ。隆臣は強いもんな」
隆臣「たぁくんつよいからね🎵」
隆二は隆臣の両手を握りしめた。
隆二「なに買ってくるかわかんなくなったら、すぐに戻ってきていいからね」
隆臣「えと、たぁくんのケーキとパーパのアメと、おとーしゃんのカレーね🎵」
隆二「あれ?たっくん、も一回言うね。たっくんのイチゴケーキは三角のを一つね」
隆臣「あい🎵」
隆二「パーパの喉飴はちっちゃいの一個で、臣のおつかいはリップクリーム一本でいいからね」
一台のハンディカメラが親子のやり取りを撮っている。
隆臣の視界にカメラマンは映っていない。
隆臣「えと、イチゴいっぱいのケーキと、パーパの塩アメと、おとーしゃーんのカレーね🎵」
隆二「カレーじゃないよ💦リップね」
隆臣「おとーしゃーん、カレーいらないの?」
臣「今夜辺り食いてぇなって思ってたけど…」
隆二「おみ!ややこしくなるからやめて💦」
隆臣「いーよ🎵たぁくんカレーもおちゅかいしゅるよ」
隆二「持てなかったらお店に置いてきていいから💦」
臣「心配性のパーパだね。隆臣、好きなもの買っといで🎵」
隆二「そうだね、なに買うか忘れちゃったらたっくんの欲しいもの買っといで🎵」
隆臣「そーなの?」
カメラマンがクスクス笑っている。
隆臣「じゃ、しゅっぱちゅしんこー✊😠」
クルリと回ると、隆臣の背中でパンダが笑っている。
隆二「ああ…心配だ」
臣「隆臣、転ぶなよ」
アンパンマンの歌を口ずさみながら、臣と隆二に背を向けて歩き始めた。
後ろは振り向かず、とことこしっかりした足取りで商店街の方へ歩いている。
10メートル位離れた時に、怪しい三人組が臣と隆二の目の前に立った。
隆二「び、びっくりした💦」
「行ってきます❗」
三人揃って姿勢正しく敬礼すると、そのまま向きを変えて隆臣の後についていった。
隆二「…え?今の…」
臣「直己さんと健ちゃんとELLYだ…」
隆二「嘘でしょ?ついてってくれるの?」
健二郎らしき背格好の男が振り返って言った。
「心配すんな‼臨時スタッフで見守るだけや🎵」
隆二「健ちゃん…」
カメラマンはニコニコして三人の姿も収めた。
ADが駆け寄ってきた。
AD「ではお二人は自宅からモニターをご覧下さい」
「…はい」
隆二はどうしても気になって、先を行く隆臣の姿を目で追った。
隆臣は15メートルほど先の角で、通行人に扮してボストンバッグに入れたカメラを持つスタッフの真ん前に立ち止まり、カメラのレンズを覗き込んでいる。
隆二「…たっくん、もう引っかかってるよ💦」
つづく
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2018.12.01 12:22
2018.12.01 12:13
2018.12.01 11:15