『W旦那+(プラス)』 TAKAOMI④ 三代目妄想劇場ショートストーリー
ピコン♫
隆二のiPhoneが鳴った。
「伸くんと啓太くん、下に着いたって」
「ん、出よう」
臣がダイニングテーブルの上に置いた水筒に気づいた。
「あれ?水筒…」
「あ!しまった…お茶入れてたっくんに持たせるの忘れてた…」
「2〜30分の事だし、マネージャーに任せとけば大丈夫だよ。待たせちゃ悪いぞ!」
「そうだね、行こ!」
玄関のキーを手にした隆二は、再びテーブルに置かれたアンパンマンの水筒を見た。
何か心に引っかかるものがあったが、臣に促されて自宅を出た。
一階に降りてマンション前に停まっているワンボックスカーに乗り込む。
LDH事務所の社員が運転席に座り、
一番後ろに臣と隆二が並んで座った。
中央のシートには劇団の伸之と啓太が座っている。
「お久しぶりです」
啓太が振り返り二人に笑顔を見せた。
「あれ?今日隆臣くんは?」
伸之も振り返って二人に尋ねた。
「今日はお留守番でね」
「そうですか。俺、隆臣くんに会えると思って楽しみにしてました」
啓太が爽やかに言うと、
「式場で遊び相手になるの楽しみにしてたんですよ」
伸之も残念そうにしている。
「二人とも嬉しいことを…ありがとね」
「凹むくらいなら、最初っから連れて来ればよかったな」
臣が隆二の頬を軽くつねって言った。
「…お酒も入るから留守番させようって言ったの臣じゃん…」
少し赤い顔をして、臣の手を握る。
「いつまで凹んでんだよ。お祝いの席に行くんだろ?」
「だって…」
「昨日はパーパ仕事行ったきりで帰ってこなかった…って拗ねてたんだよ、きっと」
「そっか…俺帰った時はもうクタクタだったもんね」
「…ほんと、イヤイヤ親子には世話がやけるよ」
片方の眉を少し上げて笑い、臣がまた隆二の頬をつねった。
「おみ…」
キスでもしかねない二人の様子を見て、伸之と啓太は黙ってゆっくり前を向いた。
「伸…なんか暑いね」
「気のせいですよ、啓太さん…」
後部座席の二人にあてられて、真っ赤な顔をしている若い二人をミラー越しに見て、ハンドルを持つ社員も笑顔を見せた。
つづく
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