三代目❤夢小説 『直己編⑧』

その声のトーンから察した…


多分…もうここへ立ち寄ることはない…


この人は最初から見返りなど求める気はない…


いつもそうやって人知れず、困っている人を助けているのだろう


今日も、たまたま女子高生が名前を口にしたから、私に素性を明かしただけで…


あの学生さんとのすれ違いがなければ、
名も告げず、私を家まで送り…


家人がいなければ、怪我の手当てまでして、笑顔で去っていく…


初対面で…
なぜそこまでこの男性の事が理解できるのか…


不思議な出逢いだった…




そして…もう二度と逢うこともない…




「では…」


彼が引き戸を開け外に出ると、霧雨が降っていた…


…これは…恵みの雨?


「あの…傘をどうぞ」


「あ…いえ、お借りしても、お返しできるかどうか…」


やはり…もう二度と来ない…


「どうぞ、お返しいただかなくても構いません」


「古い蛇の目傘ですが…」


「そうですか…では遠慮なく」


そう言って彼は傘を広げ、軽く会釈をして去っていった


黒の着流しに濃い茶色の蛇の目傘がよく似合っていた


竹林を戻るその後ろ姿は


まるで映画のワンシーンのように


私の脳裏に焼き付いた…




つづく



夢小説です。
ヒロインに名前はありません。
ヒロインになった気分で読んでみて下さい。


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