『W旦那+(プラス)』第8~9話 (メンバー飯~回想)三代目妄想劇場

三代目のメンバー飯の時に、隆二がふと言った。


「本当に俺たち…長い夢を見てるみたい…」


臣「そうかもしんないな」


二人の顔を繁々と見て健二郎が、


「リア姉、相変わらずなんか?」と聞く。




『リア姉』


『落ち着き払った様子をみると、ひょっとしたら俺たちより年上だったりして…』


そんな憶測から、健二郎は理愛をこう呼ぶようになった。


『肌の美しさを見れば、俺たちより下に決まってんだろ?』


隆二はそう主張した。





隆二「そうだね、やっぱり何も思い出せないって」


隆二「特に動作が鈍いって訳じゃないけど、客がいない時は、ぼうっと夢のように
佇(たたず)んでるよ」


健二郎「…うん、まぁその…記憶もやけどな」


健二郎「俺が聞いたんは、そっちの方で…」


隆二「えっ⁉どっち?」


健二郎「だから例の…来るもんは拒まんちゅうの?」


隆二「ああ…そっちか」


隆二「そうだね。ずっとあのままだね」


健二郎「んで、それをいいことに、お前ら二人交替で昼夜問わずチュッチュやってんのか?」


隆二「…健ちゃん、言い方よ!言い方」


臣が重い口を開いて「まぁ、否定できないけどね」と言う。


そう、理愛にはひとつ大きく欠落している感情があった。


『一人だけを愛する』という感情…


日本語を話すが、瞳の色から日本人じゃない可能性もある。


ひょっとして、多夫多妻制の国で生まれたのか?


地球上にそんな国あっただろうか?


来るものは拒まない。


全て受け入れる。


何の感情も表には出さない。


多分、メンバー7人が同時に求愛し、ベッドに誘っても、全て受け入れるのだろう。


ALL LOVE…


そんなものじゃない。


どこで『愛する』という感情を失ってしまったのか?


「結果、日替わりでイチャイチャ…」と健二郎が言う。


臣「仕方ないだろ。どっちか選べって言っても、理愛にはできないんだから」


隆二「俺は別に今のままでもいいけど」


臣「俺も別に今のままで…」


健二郎「どっちか選んでくれたら、即入籍するやろ?お前ら…」


「…入籍!?」


いきなり椅子を後ろに倒して、席を立つメンバーがいた。





健二郎「えっ⁉︎なにそんなにびっくりしてんの?…がんちゃん」


慌てて椅子を元に戻し、座り直す剛典。


明らかに動揺している。


健二郎「まさか…ボーカル二人が不在の時に、こっそりリアの店行ってんちゃうの?がんちゃん」


「そっ…そんなことないし…」


すると、横でずっと話を聞いていた直人が、


「そういや…がんちゃん、この間中目黒でファンに写真撮られてたよね?」


臣「なにっ⁉️」


隆二「がんちゃん❗️まさか?」


剛典「た…たまたま近くまで行ったから、ちょっと顔見に行っただけで…」


言うや否や、三人で掴み合い、揉みくちゃになる。


「たまのメンバー飯で揉めるな!」


直人と直己が止めに入る。


よく状況を把握しないまま、酔った勢いで
「やれやれ〜!」と、ELLYが更に喧嘩を煽(あお)っている。


(リア姉…美しいって罪やなぁ…)


『臣隆がん』を見ながら、溜息をつく健二郎だった。





剛典が「リアの店」を訪れた時、そのシーンは突然にやって来た。


剛典にコーヒーを提供し終えると、カウンターの内側に立ち、優雅に欠伸をする理愛。


剛典「理愛ちゃん…疲れたの?少し座れば?」


「はい、そうさせていただきます」


と言うと、理愛はエプロンを外し、手にぶらんと下げたまま、剛典の両膝の上に腰掛けた。


「えっ⁉️ちょっと…理愛ちゃん、椅子だったら他にも空いてるよ!」


「膝の上の方が、あったかいので…」


と言い、立とうとはしない。


(習慣なのかな?)


(あの二人、普段理愛ちゃんとそんなことしてんのか?)


剛典のすぐ目の前で、甘い香りを放つ美しい銀髪。


(これで何も感じない男がこの世にいるだろか?)


「理愛ちゃん…ごめん」


そう言って、後ろからそっと理愛を抱きしめる剛典。


「どうして?謝ることなんかないですよ」


剛典「…そーか…理愛ちゃんはオールOKだったね」


剛典「キスとかしても怒んないの?」


「はい」


「ごめん」と言って、唇押しつけてくる剛典。


茫洋として、感情を持たない美しい人形かと思えば、


いきなり向こうから舌を絡ませて、


濃厚に答えてくる理愛。


(す…すごっ…なにこれ?)


(…ヤバいな、これ…二人に知れたら、えらいことになるよね)


しばらくして唇を離し、


「二人に報告するよね?」


「どうして?そんなことしません」


「そうなんだ…」


しばらく思いを巡らせていた剛典だったが、


「理愛ちゃん…時々会いに来てもいい?」


「どうぞ」


メンバー内に亀裂が入ることも気にならないほど、


理愛にのめり込んでいく剛典だった。



End


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