『躊躇』(続・臣隆妄想劇場6)
臣「隆二!起きろ❗」
臣の声で目が覚めた。
臣「マネージャーがエントランスまで来てるって‼早く支度しろ!」
慌てて飛び起きる。
頭がズキズキと痛む。
隆二「痛てて…なんで?今日オフじゃ…」
臣はジーンズを履きながら、
「お前飲み過ぎだよ」
「昼から急な打ち合わせ入ったって!」
隆二「え?聞いてないよ!そんなの」
臣「昨日の夜遅くにLINE送ったそうだよ」
昨日の夜?
臣「とにかく早くしねぇと…ほら❗」
隆二のワンショルダーバッグと、キャップを軽く投げる。
ボーッとベッドに座ったまま、臣を見上げる。
隆二「臣…髪ボサボサ…」
臣「ニット帽被って行くから大丈夫」
急いで身支度を整え、
二人で玄関に向かいながら、
隆二「で、なんで臣ん家にマネージャーが来てんの?」
臣「もう集合時間とっくに過ぎてるから、
慌てて迎えに来たんだろ」
隆二「え?…それヤバいよね?」
スニーカーを履き立ち上がると、
後ろにいた臣が「隆二」と呼び掛けた。
「ん?」と振り向くと、
斜め掛けしていたショルダーを引き寄せ、臣がキスをする。
隆二「なっ…!?急に何すんだよ!」
臣「お前、酔ってたなんて言い訳聞かないからな」
言葉が出てこない…
数秒見つめ合ってると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
エントランスからだ。
臣「あ!今降ります!」
「行くぞ!」
臣は隆二のショルダーを引いてエントランスへ向かった。
打ち合わせの後、直人から軽く注意があった。
直人「仲がいいのは結構なことだけど、二人して大遅刻って、どーいうことかな?」
臣隆「すみません…」
二人並んで下を向き、神妙な顔をしている。
直人「次のスケジュールが詰まってるメンバーもいるから、以後気を付けてね」
二人の様子を見て、それ以上は何も言わないで、直人は部屋を出ていった。
それを横で見ていた健二郎がすかさず、
健二郎「珍しいやん!隆二が臣ちゃんの所にお泊まりって…」
ドキッとする隆二。
健二郎「なにしとったん?」
隆二「こっ…こっ…怖い映画見てたんだよ!」
明らかに動揺して答える。
健二郎「お前、声上ずっとるで」
隆二は慌てて水を飲む。
すると、それを顔色一つ変えずに見ていた臣が、
臣「知らなかった?健ちゃん。俺ら同棲してんだよ」
ブーツ!と隆二が水を吹き出す。
健二郎「冗談キツいで!臣ちゃん。隆二もなに動揺してるん?」
隆二の肩をポンと叩く。
臣「もしそうだったらウケるっしょ?」
健二郎「ツインボーカルが同棲って…アカンやろ~!それ、ファンが喜ぶやんか❗」
臣「そうなの?」
臣はコーヒーを口に運ぶ。
健二郎「臣ちゃん知らんのか?臣隆に萌えるファンも沢山おるんやで!」
臣「へーっ…」
さすがに臣…少しも動じてない…
健二郎と明るく話をする臣の横顔を見ながら、隆二は思う。
昨日は酔っ払ってたけど、うっすらと覚えてる…
最初っからずっと一方的にヤられっぱなしで、
なんか腹立つし、
酔いに任せてその気になってしまった…
けど…
舌は駄目だろ?…舌は…
左手で頭を抱え、指の間から臣を見る。
健二郎と話をしながら臣はチラッと目線をこちらに向ける。
あの台詞が甦る。
「お前…酔ってたなんて言い訳聞かないからな」
隆二は口を尖らせ剥れた顔をしてみせる。
ニコッと臣が笑顔を見せる。
これからどうなんのかな?俺たち…
ずっと無視されるくらいなら、
キスぐらいって思ってたけど…
それで満足なのかな?臣…
そんな隆二の躊躇する気持ちを知ってか知らずか、
美味そうにコーヒーを飲み干す臣だった。
End
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