『二度目で…ラスト』(続・臣隆妄想劇場2)修正版

あの日、あいつの後を追ってマンションまで行ってみたけど、帰っていなかった。

電話もつながらない。

合鍵は持ってる。

でも、さすがに勝手には入れないし…。

翌日は映画の番宣で、一日中仕事だった。

TAKAHIROさんと一緒だし、不機嫌そうな顔なんかしたら失礼になる。

何とか笑顔は作れたけど、あいつのことが気になってしょうがない。

夕方になってインスタを開けると、赤いシャツを着て笑ってる隆二がいた。

そっか…居酒屋覗くって言ってたっけ?

全てのスケジュールを終えて、TAKAHIROさんと軽く飲みに行き、別れたのが夜中の1時…。

その足で、隆二のマンションまでやってきた。

インターホンを押しても、応答はない。

こんな時間にレコーディングもないだろうし、ひょっとして健ちゃんの所かな?

電話してみよ…

臣「健ちゃん?あっ…おれ!ごめん…寝てた?」

健二郎「そろそろ寝よかなって思ってたとこや。臣ちゃんどうしたん?」

臣「隆二そっちに行ってないよね?」

健二郎「来てへんで?ここしばらくおーてへんし」

臣「そっか…ならいい…いや、特に急用でもないから。ごめんね!健ちゃんおやすみ!」

そうだよな。

俺くらいだろ?

あいつと頻繁に会ってんのは…

地元のツレん家でも行ったかな?

何気なくドアノブを回してみると、簡単に開いた。

え?いるのかな?

臣「隆二?いるの?…入るよ〜」

返事はない。

玄関からリビングへ続く廊下を歩きながら、囁くように、

臣「隆二?いないの?」

リビングに入ると、赤いシャツとジーンズが、無造作にソファの上に掛けてあった。

あれ?これ今日の昼間に着てたシャツじゃ…

臣「隆二?」

そっとベットルームのドア開けてみると…

ダブルベットの上に、白いTシャツに赤い半パンを履いた隆二が、仰向けになって寝ている。

臣「いるんじゃん…お前電話くらい出ろよ」

上から覗き込んでみると、大量の汗をかき、荒い息を吐いている。

臣「具合悪いのか?すごい汗…」

隆二「誰?…臣?」

薄っすら目を開けて、臣の顔を見る。

隆二「久しぶりにずっと外にいたら、気分が悪くなって…」

臣「熱中症じゃないの?救急車呼ぼうか?」

隆二「いや…いい…ツアー前だし…マスコミにでも知れたら、大ごとになる…」

臣「うわっ…Tシャツびしょびしょ…」

臣「とりあえず着替えて体冷やさなきゃ…」

クローゼットから着替え用のTシャツと短パンを取り、ベットの上に置くと、

臣「俺、ペットボトル取ってくるから」

キッチンの方へ向かおうとして振り返り、

臣「ちょっと着替えるの待って…タオル濡らしてくる」


キッチンで、氷を入れた水桶にタオルを浸しながら、臣は少し苛立ちを感じる。

あいつ…ほっといたら危なかったんじゃ?

具合の悪い時くらい、俺に頼ればいいのに…

キュッと下唇を軽く噛み、眉間にシワを寄せる。

タオルと、水の入ったペットボトルを3本持ちベッドルームへ戻ると…

上半身ハダカで、力尽きたように横たわる隆二の姿があった。

臣「隆二!大丈夫か?」

隆二「ごめん…起きてTシャツ脱いだら…頭がクラクラして…ちょっと…無理…」

臣はスマホを手に取り、

「救急車呼ぶぞ!」

すると、汗で光る手で、隆二が臣の手首を弱々しく掴む。

隆二「ほんと…大丈夫だから…」

隆二「今度のツアー…どれだけのファンが楽しみに待っててくれてるか…わかるでしょ?…臣」

臣「体調不良だったら、それどころじゃないだろ?」

隆二「…ほんとにヤバかったら言うから…」

臣「わかんなくもないけど…ほら」

隆二の上半身をゆっくり起こし、肩を支えてタオルで汗を拭き取る。

隆二「変な気…起こすなよ」

臣「言ってる場合か?」

臣「ほら!水」

ゴクゴクと一気に水を飲む。

臣「下は?」

隆二「いい…自分で拭く…」

臣「ん」

手にしたタオルを隆二に渡す。

隆二「タオル…冷たくて気持ちいい」

臣「氷水につけて、絞ってきた」

隆二「へー…気が効くんだ」

手を止めて、ジーッと臣の顔を見る。

臣「ん?何?」

隆二「下脱ぐから、あっち向いててよ」

臣「はいはい」

まるでオオカミ扱い…

隆二「ん…いいよー!」

ちょこんとベットに座って、こっちを見てる。

臣「横になれ」

隆二「なんか怖い」

臣「何もしねーよ!冷やすから横になれって」

隆二「何かしたら…ぶっ飛ばす…マジで」

臣「具合悪いんなら、大人しく言うこと聞いてろ!」

隆二はブーっとムクれた顔をして、仰向けになる。

熱が篭ってるような、赤い顔をしている。

臣はおもむろに、よく冷えたペットボトルを両脇に差し込む。

隆二「つめてぇ…!」

臣「体冷やすには脇の下と…足広げろ!」

隆二「⁉️…ヤダよ‼️」

臣「足の付け根にもペットボトル入れるから早く!」

臣「えーっ⁉️股間も冷やすの?それって臣の趣味じゃ…?」

臣「人をなんだと思ってんだよ!早くしろ」

隆二「じ…自分でやる」

臣「好きにしろ!…ったく」

よく冷えた別のタオルを、隆二の額にそっと乗っける。

隆二「冷たくてほんと気持ちいい…」

臣「だろ?」

隆二「ん…ちょっと眠くなってきた」

臣「寝ていいよ」

隆二「信用してっからな…臣」

臣「バカ…」

静かに寝息を立てる。

あのまま帰らなくて良かった…


しばらくして、額のタオルを取り、そっと手をあててみる。

もう大丈夫かな?

臣「隆二…寝てる?」

安らかに寝息を立てている。

これは…俺に心配かけた分のペナルティーな…

…臣が軽く唇を重ねる。

隆二「ん…」

ビクッとして唇を離す。

薄っすら唇を開き、うわ言のように、

「臣…次のツアーだけど…」

と言ってまたすぐに寝息を立てる。


二度目で…ラスト…かな?


よく冷えたタオルを優しく額に乗せ、フッと溜息をつきながら窓の外を見る。

どこかで鈴虫が鳴いてる。

さぁ!

俺たちのツアーが始まる…


END

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