『W旦那+(プラス)』第72話 三代目妄想劇場

臣と隆二が息を殺して室内を見ていると、月光が射し始め、部屋全体が明るくなった。

理愛は何も言わずに窓を閉め、スマホをバスローブの中に隠し、

ベッドに横たわる剛典に寄り添うようにして、眠りについた。

古くから西洋では、サキュバスに関する言い伝えがある。


枕元に小皿一杯の牛乳を置いておくと、

サキュバスはそれを人間の精液と間違えて、吸いとって持ち帰る。

その古の悪魔除けを一か八か試してみようと隆二が提案し、

造花を入れた花瓶の中に水ではなく、牛乳を仕込んで罠を仕掛けた。

得体のしれない黒い物体は、その牛乳を一滴残らず吸いとっていったのだろう。

これで立証された。

理愛はきっとこのサキュバスという古の悪魔に利用されているに違いない。

隆二の顔は恐怖でひきつっている。

臣は毛布ごと隆二の左肩を引き寄せ、大丈夫だから…とでも言うように、優しく擦っている。

剛典と理愛が眠ったようなので、そっと外に出る。

ホテルを出た植え込みの縁に腰掛ける臣と隆二。

外の寒さも重なって、隆二はぶるぶると震えが止まらない。

「大丈夫か?」


臣が隆二の肩を抱いた。



End

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