『余韻』(続・臣隆妄想劇場55)ショートバージョン
臣を送り出した後、ベランダにコタツ布団と羽毛掛け布団を干す。
冬の晴れ間は日差しが心地よい。
雲ひとつない青空が広がっている。
部屋に入ると、臣の好きなブレンドの香りがまだ漂っていて、
その香りだけで不思議とリラックスできる。
シーツは全て取り替えた。
ノリの効いた清潔なシーツを張ったベッドにそっと腰掛ける。
数時間前まで相方と肌を重ねた場所。
今も余韻が残り、思い出すたびに鼓動が早くなる。
(おれ…スゲー声出してたよね…恥ずかし…)
臣と深い交わりをしていることに、
抵抗は無くなったが、
女子っぽくなるのは死んでも嫌だ。
男としてのプライドが許さない。
体を貫く快感を覚えると、自然に声が出てしまうが、
「あん」とか「ダメ」とか、女子っぽい言葉は絶対あいつに聞かせたくない。
結果、相方の名を連呼する。
臣はその声を聞くのが好きで、興奮もMAXになるらしい。
(あいつは基本俺様だから、もっと俺に言って欲しい言葉もあるんだろうけど…)
ピンと張ったシーツの上に手を置き、激しかった昨夜を思い出す。
(あり得ない体勢と、あり得ない動き…)
(仕事の合間に予習でもしてるんじゃないの?)
ノーマルな夫婦でも、どんなに激しい夜を過ごしても、
翌日には、何事も無かった様な顔で、夫は仕事に行き、妻は友人とランチ…。
(俺はムリ…余韻だけで顔が火照ってくる)
時計を見る。
(軽くシャワーして、半身浴して俺も出掛けなきゃ…)
浴室に入りシャワーを開く。
全身が映るミラーで、撮影に支障がある痕跡がないかチェックする。
どうしても外に出る首や鎖骨付近は避けるように、いつも臣に言っている。
一段と激しかった昨夜も、そのルールだけは守ってくれたようだ。
(オフの前日だったら、こうはいかないけど、やればできんじゃん…)
最近肌を露出する衣装が多いので、胸や腹も要チェックだ。
「げっ…おみ〜…💧」
見ると、へそ周辺から太ももにかけて、無数のキスマークが残っている。
(そこ集中かよ…)
(ほんと…あいつヤラシ…)
恥ずかしい反面、愛されているのも実感する。
(見える場所じゃないから、このままでいいか…)
ふと、浴槽の端を見ると、大きめの透明なビニール袋に、大量のアヒルのオモチャが入っている。
昨日はひとつだけ湯船に浮かべていたが、いつか湯船が見えなくなるくらいにアヒルを浮かべ、
『アヒル風呂』なる物を作り、
隆二をその中に入れて、画像を撮る気らしい。
【回想】
隆二「その画を撮ってどうしたいワケ?」
臣「インスタ映えするでしょ?」
隆二「POSTするの?」
臣「するワケねーじゃん」
隆二「イミフ…」
スマホに保存しておいて、作詞とか煮詰まった時の気分転換にするみたいだ。
(どんな趣向だよ…)
どうしても隆二を子供扱いしたいようだ。
(大量の狼のオモチャ売ってないかな?)
(あったら同じように湯船に敷き詰めて、臣に入らせるのに…)
(大量のジャイアンでもいいけど)
プッと吹き出す隆二。
『おれ、どうせならミッキーがいい』
(言いそう…)
鏡に映った腰を見る。
毎日筋トレもしている。
最近悩ましい腰つきになってきたと臣が言ってたが、いまいち理解できない。
浴槽の半分だけお湯を張り、半身浴する。
時間のある時はこうして汗を出し、心身ともにリフレッシュしてから仕事に向かう。
目の前をぷかぷかアヒルが浮いている。
こんなとこ臣に見られたら、
『ほらーっ!やっぱ好きなんだ』
(言いそう…絶対言うよな!あいつ…)
隆二はアヒルを突きながら、
「子供扱いすんな…」と笑顔で呟いた。
もう臣とは離れられない体になった。
一人でいると、それを痛感する。
(早く会いたいな…)
体中に残る余韻に、優しく束縛されている隆二だった。
完
Ameba owndオリジナルストーリーです。
12コメント
2018.04.06 18:34
2018.04.06 16:59
2017.11.24 11:16